in english in japanese »  HOME » Conference » BBS » 氷河屋vs地形屋
Contents
氷河屋vs地形屋 会議室:「Glacier BBS」

氷河屋vs地形屋

以下2000/10/27〜10/31までの記事は,雪氷学会若手・北大低温研氷河関係者十数名の間で交わされたメールの内容を,関係者の同意のもとに,ここに転載したものです.11/1以降は,その議論をこの掲示板に移して,ひろく一般にオープンしました.

発言者:藤田@名大

(Date: Fri, 27 Oct 2000 17:50:02 +0900)


まいど皆さま、藤田@名大です。

比較氷河の件、先ほど雪氷関係に案内を流しました。

上田さん経由で流れてくる寒冷地形懇談会のMLでは、「打倒!氷河屋」でずいぶん
盛り上がっているようです。研究会のテーマが自分が考えてたのとはちょっと違って
るんだけど、まぁ、いいでしょう。なんせ5年ぶりだし、、

でですね、個人的には地形屋の話を聞けるいい機会だと楽しみにしています。けど、
それだけじゃ、盛り上がっている地形屋グループに失礼だと思うわけです。

氷河屋グループとしては対抗馬を用意しておかないといけません。そこで、皆さまか
ら「地形屋と闘うためのテーマ」と「対戦駒」の推薦を受け付けたいと思います。要
はですね、「この人にこんなテーマで地形屋をうち負かしてほしい」という希望を出
してほしいのです。

この件については11月中旬(19日)までにお願いします。特に「地形云々」を言
い出した山口くん!あと、「ホントは次期主催者」の朝日くん!頼むでぇ〜

おもしろいので、煽りまくってますが、皆さんのご推薦(チューリッヒand/orネパー
ルからも!)をお待ちしております。

テーマだけ、人だけでもいいです!   とにかくよろしく!!


白岩孝行 さんからのコメント
( Date: Fri, 27 Oct 2000 16:00:34 +0200)

藤田様
他 皆様

こんにちは。昨日、Hilmar Gudmundssonに初めて会いました。顔からして、やっぱり賢そうでした。VAWは理論屋が多いので、けっこう敷居が高いです。今週は、K.Hutterが朝の8時から夕方の5時までびっちり1週間、雪氷学の授業をやっていました。私はでませんでしたが、出席した学生に聞いたら、毎秒1回数式が出てきて、まったくフォローできないと言ってました。そんななかで、やはり氷河地形と氷河学の境界にいるHaeberliさんには、たいへん親しみを感じております。

さて、

>上田さん経由で流れてくる寒冷地形懇談会のMLでは、「打倒!氷河屋」でずいぶん
>盛り上がっているようです。研究会のテーマが自分が考えてたのとはちょっと違って
>るんだけど、まぁ、いいでしょう。なんせ5年ぶりだし、、

上田先生が寒冷地形談話会のMLに入っているとは知りませんでした。スイスで日本語を話す機会がないので、MLなどで発言し、ストレス解消していましたが、いいかげんなことは書けんなと焦っております。

比較氷河研究会が動き始めるのは良いことだと思います。氷河と地形のテーマも面白いと思いますが、研究会のテーマを「なにそれ」と設定してしまうのはちょっとどうかな?比較氷河はちょっと「いかがわしい話」話なども自由に話せるのが良いところなので、観測屋、モデル屋、理論屋、その他もろもろが集まるためにはテーマを設定せず、会議の中のセッションかなにかで集中的に議論してはいかがでしょうか。
>
>でですね、個人的には地形屋の話を聞けるいい機会だと楽しみにしています。けど、
>それだけじゃ、盛り上がっている地形屋グループに失礼だと思うわけです。

松元君がいつものように「対決」を煽っていますが、対決というよりは、氷河屋の話す「数学・物理」という言葉と、地形・地質屋の話す「観察・記載」という言葉をお互いが理解する努力をして、テーマを絞れば結構会話は可能であると思います。この意味で、名大が進めているデブリプロジェクトは、お互いが歩み寄って共同で進められる良いプロジェクトだと思います。このプロジェクトから出てきた成果は、地形屋さんには非常にインパクトが大きいと思います。

一方、今回話題になっている「堆積物と氷河流動」を大々的に前面に出すのは、ちょっと時期早尚じゃないかなぁ?このメールの宛先の方々は別として、2万年前に堆積し、かつ浸食されて残骸しか残っていない堆積物を見ている日本の地形・地質屋さんと、氷河の表面での測量だけでダイナミクスを議論している氷河流動屋さんの議論をうまく噛み合わせるのは結構むずかしそう...

まぁ、最初はヒッポファミリークラブのように、色々な言葉を話す者どうしが集まってワイワイやっても成果はあがると思いますけど。

>氷河屋グループとしては対抗馬を用意しておかないといけません。そこで、皆さまか
>ら「地形屋と闘うためのテーマ」と「対戦駒」の推薦を受け付けたいと思います。要
>はですね、「この人にこんなテーマで地形屋をうち負かしてほしい」という希望を出
>してほしいのです。

自分が参加できないのに推薦するのは無責任ですが、地形屋にインパクトを与える氷河屋からの発表として以下を推薦します。

1.坂井さんのデブリ氷河の融解と氷河湖底堆積物からみた流域浸食量の話
2.飯塚さんの南極底面氷解析と南極氷床の底面における水文状況に関する話
3.知北さんの氷河湖におけるSedimentationの話
4.山田さんのヒマラヤの氷河のモレーンの内部構造に関する話(たしかレーダーで探査したよね?)
5.内藤さんのデブリ氷河における電波探査の話(氷河内部のデブリ含有量は見積もれないのかなぁ?)
6.中尾さんのデブリ氷河のデブリ変動に関する理論(Annals of Glaciologyで昔見たような?)

いずれも従来地形・地質屋さんが観念とか想像の世界でしか考えていなかった氷河のプロセスに関わる部分を実証的なデータから解明した点で、少なくとも私にはインパクトがありました。

以上、なんだか自分が地形屋の側にいるのか、氷河屋の側にいるのかわからなくなってきましたが、しばらくはコウモリとなって、会議がうまくいくようスイスから見学しています。ご健闘を。


山口@低温研 さんからのコメント
( Date: Sat, 28 Oct 2000 00:19:38 +0900)

山口@低温研です。

なんか僕と松元が”氷河屋Vs地形屋”をあおっているような気がしますが・・・・
・・。
まーたまには良いですか・・・。

ところで以下は私のひとつの案ですが、

第一日目
・氷河学と地形学の最先端の研究発表
(今現在の調査ならびに研究報告)

第二日目
・シンポジウム(フリートーク)
午前中
・氷期にどのような氷河が日本に存在したのか!!!ー氷河屋の立場から・地形屋の
立場からー
午後
・氷河屋から地形屋に希望すること・地形屋から氷河屋に希望すること

その後懇親会


というのはどうでしょうか?

第一日目は、各研究分野がどこまで進んでいるかに対する情報交換の場。

第二日目は

午前
「氷期にどのような氷河が日本に存在したのか!!!ー氷河屋の立場から・地形屋の
立場からー」

今年の3月に地理学会のシンポジウムでそのような話を”白岩さん”をはじめとする
人が発表しそれに私も参加しましたが、大御所を前に”純粋氷河屋”が私一人だった
ために疑問等あったのですが発言できませんでした・・・・・・・・。

せっかく同じ国に氷河屋と地形屋がいるので自国にあった氷河については共通の見解
を持つべきではないでしょうか???少なくとも何が問題かをお互いに認知すべきで
は???


<具体的>には
午前
「氷期にどのような氷河が日本に存在したのか!!!ー氷河屋の立場から・地形屋の
立場からー」

氷期の氷河の規模について地形屋から”認定基準←このあやふやさ(説明不足)が氷
河屋にはちょっと不満)”を踏まえて問題提起

それに対して氷河屋から

・地形屋が氷河地形から再現した氷河が”現在の氷河学”に則っているのかどうかを
踏まえたコメント

コメントの内容としては
・日本の氷期に存在していた氷河の質量収支特性
←観測結果等から氷河屋がコメント

・日本の氷期に存在していた氷河の流動特性
←観測結果、氷河モデル等から氷河屋がコメント


午後
「氷河屋から地形屋に望むこと、地形屋から氷河屋に望むこと」

今後お互いに議論を続けていく上で共通に必要な情報・データ・知識はなにかについ
て意見をだしあう


と言う具合です(私の興味がかなり反映されていますが・・・・・)?


白岩さんの”研究会のテーマを決めるというのはどうか”と言う意見に対しては私も
賛成ですが、せっかく氷河屋と地形屋が集まるのだから少なくともお互いに議論がで
きるテーマをひとつ選んで徹底的にやりあうのも良いと思います。そうすることでお
互いに理解できる点が多くなるのではないでしょうか?


また、白岩さんが推薦なさった

>自分が参加できないのに推薦するのは無責任ですが、地形屋にインパクトを与える
氷河屋からの発表として以下を推薦します。

>1.坂井さんのデブリ氷河の融解と氷河湖底堆積物からみた流域浸食量の話
>2.飯塚さんの南極底面氷解析と南極氷床の底面における水文状況に関する話
>3.知北さんの氷河湖におけるSedimentationの話
>4.山田さんのヒマラヤの氷河のモレーンの内部構造に関する話(たしかレーダー
で探査したよね?)
>5.内藤さんのデブリ氷河における電波探査の話(氷河内部のデブリ含有量は見積
もれないのかなぁ?)
>6.中尾さんのデブリ氷河のデブリ変動に関する理論(Annals of Glaciologyで昔
見たような?)

等につきましては、第一日目で発表してもらうようにするってのはどうでしょうか?


第二日目に関しては、具体的に誰がどのような発表をしたら良いかわかりませんが、

午前の部に関しては事前に”ひとつの地域の氷河地形(たとえば日高とか日本アルプ
ス)”に限定してそれに関する発表者(地形・氷河屋等からそれぞれ代表2名くらい
ずつ)を募るというのも良いかも知れません。

午後の部は、澤柿さんあたりがイニシアティブをとるというのはどうでしょう????


以上かなり勝手なことを書きましたが私個人としては、非常に楽しみにしているとと
もに”今後の日本の氷河研究”に少なからず影響を与える会になるのではと期待して
います。


皆様のご意見をお待ちしております。

それでは失礼いたします。


内藤@名大大気水圏研 さんからのコメント
(Date: Sat, 28 Oct 2000 01:21:05 +0900)

白岩様、他皆様

内藤@名大大気水圏研です。

> こんにちは。昨日、Hilmar
Gudmundssonに初めて会いました。顔からして、やっぱり賢そうでした。VAWは理論屋
が多いので、けっこう敷居が高いです。今週は、K.Hutterが朝の8時から夕方の5時
までびっちり1週間、雪氷学の授業をやっていました。私はでませんでしたが、出席
した学生に聞いたら、毎秒1回数式が出てきて、まったくフォローできないと言って
ました。そんななかで、やはり氷河地形と氷河学の境界にいるHaeberliさんには、た
いへん親しみを感じております。

---
Hilmar Gudmundssonさんは、昨年のIGSチューリヒシンポで私もお会いしまして、
氷河のダイナミクス屋さんということで興味は持ったのですが、確かにちょっと話し
づらかった印象がありますね。(英語力の問題もありましたが、、、)

Hutter氏といえば「Theoretical Glaciology」の著者ですよね。
あの本はほんとに数式ばっかりの教科書でついていけなかったのですが、
(Patersonの「Physics of Glaciers」どころの比ではない)
毎秒1回数式が出てくる授業とは、やはりたまりませんねぇ...

さて、余談はさておき、、、

>
比較氷河研究会が動き始めるのは良いことだと思います。氷河と地形のテーマも面白
いと思いますが、研究会のテーマを「なにそれ」と設定してしまうのはちょっとどう
かな?比較氷河はちょっと「いかがわしい話」話なども自由に話せるのが良いところ
なので、観測屋、モデル屋、理論屋、その他もろもろが集まるためにはテーマを設定
せず、会議の中のセッションかなにかで集中的に議論してはいかがでしょうか。

>
一方、今回話題になっている「堆積物と氷河流動」を大々的に前面に出すのは、ちょ
っと時期早尚じゃないかなぁ?このメールの宛先の方々は別として、2万年前に堆積
し、かつ浸食されて残骸しか残っていない堆積物を見ている日本の地形・地質屋さん
と、氷河の表面での測量だけでダイナミクスを議論している氷河流動屋さんの議論を
うまく噛み合わせるのは結構むずかしそう...

---
私もほぼ同感です。
まあ比較氷河研を開催するに当たって、なんらかの「テーマ」を設定する必要がある
でしょうから、とりあえず「堆積物と流動」ということにする分にはまあ構わないの
ですが、基本的な研究会のコンセプトとしては、「なんでもあり」という部分を残し
た方がよいように感じています。

また「堆積物と流動」というテーマだと、地形屋さんと流動屋さん以外の方が窮屈な
思いをしかねないかとも思うので、
いっそのこと「氷河に関する研究手法(アプローチ)の『比較』」というような「『
比較』氷河研」はどうかなぁ?と漠然と思っていました。
「堆積物と流動」は、その有力なサブテーマの一つにはなるでしょうし。
個々の地域・氷河に関する研究紹介(地理的意味での氷河の『比較』?)というより、
対象氷河が違っても、この研究手法では今こういうところまで進歩していて、こうい
う課題が残されている、またどのような展望があるか、といった感じの相互のレビュ
ー的な研究会というのはどうでしょうか?
私自身もあんまりしっかりした具体像を持っているわけではないし、それにありがち
なパターンのような気もするし、下手をすれば話が発散してしまいかねないとも思う
のですが、、、

>
まぁ、最初はヒッポファミリークラブのように、色々な言葉を話す者どうしが集まっ
てワイワイやっても成果はあがると思いますけど。

すいません、「ヒッポファミリークラブ」って何ですか?
(本題には関係ないですけど...)

>
5.内藤さんのデブリ氷河における電波探査の話(氷河内部のデブリ含有量は見積も
れないのかなぁ?)

---
あのー、、、レーダーに関しては私はとても専門とは言えず、話題提供は勘弁して下
さい。
昨春のクンブとリルンでの氷厚測定は、レーダー操作と解析自体に関してはワシント
ン大主導でしたので、、、
むしろレーダーの話は松岡君あたりが適役では?
(「堆積物と流動」というテーマなら、ちょっとずれてしまいそうですが)
私としては、氷河変動モデルか、氷河流動に関連した話題提供を考えておこうかと思
っています。

それから、いちゃもん?だけのメールでは何なので、、、
「堆積物と流動」というテーマからはずれますが、私が聞いてみたいなぁと感じる話
題(研究手法)を思いつくまま挙げておきます。

1.リモートセンシング
氷河変動モニタリングとして、今後どの程度有効な展望があるか?

2.古気候復元
コア解析については最近研究が盛んですが、誰か全般的なレビューをしてくれると個
人的には有り難いです。
あと年輪とかも?

3.地質年代決定
絶対年代決定の現状と問題点のレビュー?

4.レーダー
白岩さんご指摘の氷河内デブリの含有量見積(うーん、現状では難しいのでは?)に
加えて、氷河内・底の水の存在の検出とか?

なんだか、レビュー的なものばかりになってしまいましたが、それぞれの分野(セッ
ション)で誰か代表的な人がレビュー的にまとめ、基本的には「なんでもあり」の発
表で良いかと思っています。
また特に改めて挙げはしませんでしたが、当然「堆積物と流動」といったテーマも個
人的に大いに興味は持っていますし、楽しみにしています。
それに今さら、盛り上がりつつあるテーマを変えるor広げるというのが難しいとい
うことなら、上記は敢えて強く主張するものではありません。
「また別の機会に」ということで。

>
以上、なんだか自分が地形屋の側にいるのか、氷河屋の側にいるのかわからなくなっ
てきましたが、しばらくはコウモリとなって、会議がうまくいくようスイスから見学
しています。ご健闘を。

---
「地形屋の側にいるのか、氷河屋の側にいるのか分からない」と言える人は貴重です
よね。
白岩さんが参加できないのは残念ですが、、、仕方ありませんねぇ。

とりとめない文章で、すいませんでした。


松元@低温研 さんからのコメント
( Date: Sat, 28 Oct 2000 01:42:29 +0900)

氷河陣営?関係者のみなさま

こんにちは。
対決仕掛人として指名手配されております、低温研の松元です。
何だかメーリングリストも含めて各種ネットワークが混じり合って、いきなり盛り上
がってしまいましたが・・・、

> >研究会のテーマが自分が考えてたのとはちょっと違ってるんだけど

藤田さん、すみません。どんどん煽ってしまいまして。

> 氷河と地形のテーマも面白いと思いますが、研究会のテーマを「なにそれ」と設定
してしまうのはちょっとどうかな?比較氷河はちょっと「いかがわしい話」話なども
自由に話せるのが良いところなので、観測屋、モデル屋、理論屋、その他もろもろが
集まるためにはテーマを設定せず、会議の中のセッションかなにかで集中的に議論し
てはいかがでしょうか。

うーん、たしかに白岩さんのおっしゃるように、あんまり統一テーマにしてしまうの
も、折角の機会だからもったいないのかなという気はします。そして、

> 一方、今回話題になっている「堆積物と氷河流動」を大々的に前面に出すのは、ち
ょっと時期早尚じゃないなぁ?

という御意見もごもっともです。ただ、テーマに関しては先ほど山口から回ったメー
ルでの提案(彼が発信する前に話し合いましたので、ほんとの細部はともかく、私の
考えも基本的に全く同じです)では、もっと広い枠組みになっていると思います。ど
うでしょうか。

ところで、

> 松元君がいつものように「対決」を煽っていますが、対決というよりは、氷河屋の
話す「数学・物理」という言葉と、地形・地質屋の話す「観察・記載」という言葉を
お互いが理解する努力をして、テーマを絞れば結構会話は可能であると思います。こ
の意味で、名大が進めているデブリプロジェクトは、お互いが歩み寄って共同で進め
られる良いプロジェクトだと思います。
> まぁ、最初はヒッポファミリークラブのように、色々な言葉を話す者どうしが集ま
ってワイワイやっても成果はあがると思いますけど。

ということですが・・・。
今年のカムチャツカで、青木さんと山口の議論やら現場でのモレーンに関する認識の
不一致等々をまたまた味わいました結果、これまで以上に、「お互いが理解する努力
をして」とか「テーマを絞れば結構会話は可能」とか「色々な言葉を話す者どうしが
集まってワイワイやっても成果はあがる」とかいう御意見には賛成できなくなりまし
た。はっきり言いまして、ただ集まってワイワイやったところで、相互理解なんかで
きません。そう思っています。だいたい、両陣営(経験者)が混じり合っている我が
氷河・氷床研究グループにおいてすら、必ずしも十分な相互理解が成立しているとは
言いにくいのではないでしょうか?
また、白岩さんが推薦された話題ですとか、それに相当する地形側からの話題を交換
しても、それがただ相互の結果報告にだけ終わったのでは、てんで理解は深まらない
と感じざるを得ません。
お互いの結果が自分にとって「インパクト」になるためには、少なくともお互いの分
野の基本的な論理・発想が分かって(理解して、とまでいかなくても)いなくてはい
けないのではないか、そうでなければその結果を「証拠」としても「反証」としても
取り上げようがないのではないかと愚考するわけです。

「澤柿さんや青木さんは何を根拠にモレーンとか何とか決めるのか分からん」と例の
如く山口が言うとき、また澤柿さんが「山口が何を分からないのかが分からない」と
ビルチェノックでおっしゃったとき、あるいはカムチャツカのシンポの後、拙宅に泊
まった澤口・長谷川両氏(私の先輩にあたるバリバリの氷河・周氷河地形屋です、す
みません)が「物理屋ってイイカゲンだよな」とぼそっと言ったとき、そこには「結
果」に対してではなく「発想・論理」に対する理解の欠如があるのだと、もう切実に
感じているのです(引き合いに出してしまった方、お許し下さい)。
見事に双方の分水界に立ち得ている白岩さん(あるいは岩田先生や澤柿さんも)はど
ちらの側の情報も自ら検討していらっしゃるわけですが、多くの人がそう簡単にはい
っていないという証拠を飽きるほど見てしまっています。そして、「あいつらが言っ
てることは分からん」と後になって私が聞かされるのにはもはやウンザリしました。

まあ、もちろん「対決」というのは「コトバのあや」であります。「氷河屋の話す「
数学・物理」という言葉と、地形・地質屋の話す「観察・記載」という言葉」とを、
まず相互がいくつかの基本単語と文法とを説明し合って勉強してみよう、というわけ
です(これもコトバのあやか・・・?)。ですから、

>2万年前に堆積し、かつ浸食されて残骸しか残っていない堆積物を見ている日本の
地形・地質屋さんと、氷河の表面での測量だけでダイナミクスを議論している氷河流
動屋さんの議論をうまく噛み合わせるのは結構むずかしそう...

という御心配はごもっともで、そのレベルでかみ合うところまで到達しうるのかは私
も疑問です。レベルとしてはもっと下になってしまうかも知れない。でもお互いの「
言葉」についてまず理解を深めない限りは、その先はないと感じています。
ただ白岩さん御推薦のような話題が提供されるとすれば、それはもちろん私にとって
興味深く、おそらく地形・地質の方も興味をお持ちになることでしょうから、山口が
提案したように、そういう各種発表の場は確保したほうがいいのではないかと思いま
す。

> 以上、なんだか自分が地形屋の側にいるのか、氷河屋の側にいるのかわからなくな
ってきました

これを言うと白岩さんには怒られそうですが、実は白岩さんの不参加というのはむし
ろ良いことなのかもしれない(すいません!!!)とも感じているのです。あっさり
両方理解しちゃって双方の肩を持ったあげくに、白岩さんが双方から白紙委任されて
しまった、なんてのよりは、「何でお前は分からないんだ!」と両陣営の頑固者がい
つまでもヤリあいつづけて終わらないという会になるほうが、私には面白いようです。
今までの比較氷河の特色やレベルとは大いに違ってしまうのかもしれませんが、名称
はともかくそういう会があって欲しいと思います。

「いつまでも宗教みたいなこと言っとらんで、高校の物理から勉強し直してこい、こ
のバカ!」
「何でも単純化しやがって、お前にはこの多様な自然が見えないのか、この物理学帝
国主義者め!」
あたりの双方の悪口を(さすがに会場ではまずい!・・・懇親会の3次会あたりで)
直接投げかけあうような機会があれば・・・ぜひ見たい、のです。

なんて、さらに煽ってしまいました。
が、もちろんケンカを見物するのが目的ではありません。「氷河(物理)学と氷河地
形・地質学との意見交換、交流」という点にひとつのテーマがあるとするならば、そ
れがスムースに、かつ深いレベルで行われるような企画になればということです。さ
っぱり生産的な意見ではありませんでしたが、何度も申しましたように、両者のディ
スコミュニケーションを飽きるほど見ている者の感想ということで、いくらかでも御
参考になれば幸いです。具体的な企画については山口の提案に同じ、ということでお
許し下さい。

乱文で失礼しました。では。

追伸:「発信」直前に内藤さんからのメールを受け取りましたが、長くなりましたの
で、そのメールは反映せずに送信しちゃいました。お許し下さい。


坂井亜規子@名古屋大学大気水圏科学研究所 さんからのコメント
(Date: Mon, 30 Oct 2000 12:12:49 +0900)

白岩様、みなさま

寒冷地形ML、上田さん経由で読みました。
やっぱりBoultonさんはすごいですかあ。

−−−−−−−−−−

白岩さん>
地形(地質)と氷河という二つの境界領域の話しが松元さんから出ましたので、つい
昨日こちらのゼミで聞いた、G.S.Boutonさんの話しを紹介しておきます。氷河地形・
地質の方は既にのご存じと思いますが、Boultonさんは1970年代からこの境界を切り
開いてきたパイオニアで、Boulton and Hindmarsh (1987) Sediment deformation
beneath glaciers:rheology and geological consequences. JGR, 92,
9059-9082は、最近の氷河屋さんの堆積物ブームを生み出したEpock
Makingな論文として、Citation Indexで常のトップを走っています。

−−−−−−−−−

うーんなつかしいっす。卒論のレビューで、tillと流動の話をやったっけ。
きっかけはMacAyeal(1992)の西南極氷床の変動とTillの話でしたが、いつもtillと流
動のプロセスの話になると結局はこの論文にもどってしまったことを覚えています。
(でも数式が多くて、”雰囲気”しか理解できなかった・・・Till層が動くことを観
測した図なんかはわかりやすくてよかったけど、実際観測するからすごい)
ローレンタイド氷床は氷河底ティルがあったために薄かったんじゃないかという論争
はまさに地形屋と氷河屋の対決と融合を見た感じでしたね。

今度の比較研はみんなの見ている対象が違うので、話題がどういう方向に進んでいく
かよくわからないけど、楽しみにしてます。(既に他人事か?)
とくに、地形屋さんは氷河屋のどんなところがイイカゲンだと思うのかが知りたいな。

白岩さん、
1.坂井さんのデブリ氷河の融解と氷河湖底堆積物からみた流域浸食量の話

ってのはちょっと待ったあ! 
前半のデブリ氷河の融解はまあ話せるけど、「氷河湖底堆積物からみた流域浸食量の
話」はまだちゃんと手をつけてないんですけど、、、(やべぇ。白岩さんに話しちゃ
ったのが運の尽きか?準備する時間がない。。。)地形屋さんにアドバイスをもらう
いいチャンスかもしれませんが・・・
(基本的に私は地形屋さんには頭が上がりません。アイデアもらったりしてるし。私
のすげえイイカゲンな話を氷河屋のなかの発表に入れるときっと氷河屋の顔に泥をぬ
ってヤバイことになるのではないかと危惧しています。。。)

白岩さん、参加できないんだから、もっとメールで煽って下さいね。

ではでは


PS.白岩さん
「Subglacial groundwater flow and geochemical and mechanical effects」の話面
白いですね。
論文になっていないんですか?

氷河’横’ティルって何ですか?


前
[kanreichikei:191] 氷河横ティル #
カテゴリートップ
BBS
次
氷河屋vs地形屋 #

Copyright © 2000-2024 Study Group on Quaternary Glaciation in Japan