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ドイツ語圏第四紀学会参加報告 会議室:「Glacier BBS」

ドイツ語圏第四紀学会参加報告

発言者:白岩孝行(ETH)

(Date: 2000年 9月 15日 金曜日 1:10:31)


はじめてこの掲示板に書き込みます。自分のホームグラウンドに書こうと思いましたが、テーマが現成氷河とは少し離れるので、こちらに書いて、自分のところにも宣伝することにしました。去年の秋にあった、Grosswaldレポートに端を発する活発の意見交換も下火になってしまったので、来年の国際地形学会議に向け、そろそろブレーンストーミングも必要と感じています。これを機にまた活発な意見交換がはじまることを期待しています。

さてさて、標題に戻ります。今夏スイスにいらっしゃった平川先生に存在を聞き、興味を持っていました。そんなところにオーストリアのProf. Helmut Heubergerから直接電話をいただき、是非参加するようにとのことでしたのでドイツ語がわからんともいっておられず、3日間の会議と3日間の巡検に参加してきました。

この会議、正式にはDEQUA2000というタイトルで、「ドイクァ・ツヴァイタウザント」と発音されていました。フルタイトルは不明ですが、ドイツ語圏の第四紀学会だそうで、ドイツ・スイス・オーストリアの3ヶ国で2年に一度持ち回りで開催されているそうです。これらの国以外の発表者もいましたが、大部分はこれらの国々の人で、公用語はドイツ語です。

学会は9月6日から8日の3日間、スイスのベルン大学を会場として開かれました。オーガナイザーは、日本でもおなじみの氷河地質学者 Prof. Christian Schluechterさん(ベルン大学教授)です。プログラムは以下をご覧ください。これ以降は、私が面白かった発表とアジアの氷河地形に関わる発表、および巡検報告のみ記します。なお、ドイツ語での発表がほとんどであったため、私の理解は知れており、ここに書くことにも間違いがあるかもしれません。責任は負いませんので、その点はご容赦を。

M. Kelly (Univ. Bern): Reconstructing the surface elevation and flow-line configulation of the last glacial maximum (LGM) ice cap of the Western Alps
スイスのヴァリス地方において、LGMの氷河の表面高度を求めるべく、ひたすらにフィールドでStriationの上限と向きを追い求めた研究。G.Denton教授のところで修士論文を終え、現在、Schluechter教授のところで進めている博士課程のテーマ。マッターホルンがどこまで氷河に覆われたか調べるため、マッターホルンに登ってしまう元気な女の子。今大会中唯一の英語の発表で、まだまだ発展途上だが、楽しい発表。巡検中もいろいろ聞けて面白かった。

J. Schefer (ETH): Absolute Datierung von Gletschervorstoessen: Oberflaechenexpositionsdatierungen am Beispiel der Palaeovergletshcerungen des Tibetanischen Plateaus
チベット高原のタングラ峠周辺のモレーンについて、宇宙線照射年代(10Be, 36Cl,...)を用いて年代決定をした。こちらもProf. Schluechter一派のポスドク。モレーンの年代が30万年前とかかなり古い値を出していた。質疑応答で、チベット氷床支持者のひとりJaeckli教授とやりあっていたが、ドイツ語のため、詳細不明(残念!)

M. Boese et al. (Freie Univ. Berlin): Zur Gebirgsvergletscherung von Taiwan/ R. Hebenstreit and H. Martens ((Freie Univ. Berlin): Vorzeitliche Vergletscherung des Nanhuta Shan, Taiwan
この二つの発表は、Prof. Boeseと学生二人による台湾北部の氷河地形に関する発表。南湖大山(これで良かったかな?)の氷河地形を新旧二つに分類したという、結構初歩的な発表でした。今年の10月もまだ調査を続けると言っていたので、これからが楽しみ。来年の国際地形学会議にもProf. Boeseと大学院生のR. Hebenstreitは参加すると言ってました。R. Hebenstreitは地形学会議で台湾巡検に参加したいと言っていたので、是非、日本アルプスか日高にするように伝えておきました。

H.Kerschner et al. (Univ. of Innsbruch): Gletscher-Klima-Beziehungen als klimageschichtliche Informationsquellen-Beispiele aus dem alpinen Spaetglazial
日本にも来たことのあるProf.Kerschnerの過去の氷河を利用した古気候復元に関する発表。私も学生時代は彼の論文をいくつか読んだが、当時は結構原始的なモデルだったが、最近は現在の氷河に関する研究も取り入れ、少しはダイナミクスも入ったモデルに進展していた。要は、過去の氷河を復元し、その氷河の規模から当時の気温と降水量を復元しようという試み。

K.Heine (Univ. Regensburg): Neue 14C-Daten zur juengeren Dryaszeit in den ecuadorianischen Anden
こちらもおなじみK.Heine教授のエクアドルアンデスの氷河編年に関する発表。特に、ヤンガードリアス期の堆積物に関し、怒濤のごとく14C年代を求めていた。ちなみに、同じ露頭を調べたスコットランドのC. Clapperton教授も同じような年代を得たとか。彼は今病床中。ところで、K.Heine教授のところには最近まで京大の水野さんが滞在していた。水野さんの滞在中の行動については面白い話を聞いたが、内緒。

A.Hormes and C. Schluechter (Univ. Bern): 14C-Datierungen von minimalen Gletscherausdehnungen und 14C-Plateau
Schluechter教授のポスドク。今回の学会で一番面白かった発表。アルプスの氷河の現在の末端から出てくる樹木の年代を測る仕事。手法は単純だが、現在は氷河末端よりはるか下方にある森林限界が、かつては氷河より高かったということを示し、その年代を議論した。要は、氷河の変動曲線で、いつも点線で書かれる縮小期の部分を実線で書く仕事。彼女によると(なぜかSchluechter教授の学生は女性が多い)、Holoceneの間に、何回かアルプスの氷河が大幅に縮小するかあるいは消えた時代もあったらしい。まさにアイデア勝負の一本がちという見本。実はこのアイデア、1990年の北京のINQUAでSchluechterさんが発表していたのを覚えているが、この10年間でここまで進んだかと感心した。

S.Ivy-Ochs et al.(ETH):Expositionsalter und palaeoklimatische Interpretation der Gschnitz-Moraene in Trins, Stubaier Alpen
第一発表者がこれなかったので、共著者のH.Kershner教授がかわりに発表。内容はオーストリアアルプスのモレーンの年代を10Beや36Clの宇宙線照射年代で精力的に測りまくったもの。第一発表者は、宇宙線照射年代の測定を専門とするSchluechter教授のポスドクで、彼女が発表していたらおそらくもっと深く宇宙線照射年代のことを聞けたのではないかと思い、少し残念でした。ちなみにS.Ivy-Ochsさんのことは、前にも書きましたので、興味のある方は、こちらへ:http://glacier.lowtem.hokudai.ac.jp/easyBBS/bbs.acgi?r=room_3&BBS_MSG_000825003306.html

以上、DEQUA2000の報告でした。日本の第四紀学会とは異なり、発表の90%が氷河堆積物か氷河地形がらみで、ドイツ語がわからないなりにも楽しめました。また、この学会では、Albrecht Penck賞という賞を会員に授けているようで、今年はRene Hantke教授(元ETH)とHelmut Heuberger教授、それからもうひと方が受賞しました。

なお、学会後、9月9日-11日にかけて、Grimssel PassからZermattに至る巡検が行われましたが、こちらは疲れたので機会をあらためて紹介します。

DEQUA2000


澤柿 さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 19日 火曜日 16:12:02)

白岩さん,詳しい報告ありがとうございます.

先日シアトルで行われたデブリカバー氷河のワークショップで,
Glacier&Glaciationsの著者の一人である,D.Benn氏に会いました.

ワークショップでは,氷河地質屋はマイナーな存在でしたが,日本の
氷河作用研究のことについて話をしました.Grosswaldの件も話題にし
ましたが,He is mad といって笑ってました.

INTERNATIONAL WORKSHOP


白岩孝行 さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 19日 火曜日 17:20:05)

金曜日にイギリス帰りの松岡さんと食事しました。イギリスの学会(周氷河関係)にはBoultonとBennが来ていたそうです。Bennは短期間の間にイギリスとUSAを飛び回っていたんだね。デブリの学会はプログラムを見たら、本当に面白そうですね。岩石氷河の研究者も多かったようで、デブリをやってる氷河屋さんとの間でどのような議論があったか楽しみです。

DEQUA2000について補足すると、この会議にはProf. Jaeckliを除いてチベット氷床支持者はいませんでした。ドイツ人に聞いたら、Kuhleさんらは、(議論にならないので)DEQUAには来ないと言っていました。朝日君がしばしば言及しているゲッチンゲンのKuhle以外のグループは、ひとりの教授(Prof. Hagedorn)を除き、見あたりませんでした。フィールドが忙しいのかな。

以上、デブリ学会ご苦労さまでした。雪氷を楽しみにしていますが、出るまでは長いので、サマリーだけでも報告してもらえるとありがたいです。


白岩孝行 さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 19日 火曜日 22:05:12)

あっ、そうそう、He is madで思い出した。

Findeln glacierの巡検でNye ChannelやP-formがあり、Schluechterさんが、Nye channelを水流の侵食、P-formが氷河の侵食ときっちりわけたので、「P-formは水流ないの?Shawも言ってるよ」と言ったところ、

He is absolutely crazy !

という言葉が返ってきました。Schluechter氏によると、カナダで開かれたINQUAで誰もがBasal tillと認める堆積物をShawさんはひとりでOutwashと言い張ったそうで、それ以来、「Glacial Geologistsの間ではShawは信頼を失った(Schluechter談)」らしいです。

やはりサイエンスを変えるにはmadでcrazyでないとダメなんですかね?


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