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Glaciologistsにとってのティル 会議室:「Glacier BBS」

Glaciologistsにとってのティル

発言者:白岩@ETH

(Date: 2001年 3月 01日 木曜日 17:55:13)


この1ヶ月、バタバタしており、時折WEBを覗いてはいるものの、充分考える時間がなくコメントできませんでした。火曜日に山岳氷河の会議から戻り、「ティルの成因分類についての討論会をしませんか?」をプリントして、何度も読んでみました。が、悲しいかな10年以上考えていなかった話題だけに、良く理解できない点が多く、変にコメントしても議論を混乱させるだけだと思ったので、あえて場所を変えて違う視点からティルに関し話題を提供します。なお、この話題提供には、比較氷河の後、雪氷屋さんからの意見があまり見られないため、彼らにも発言してもらいたいという意図もあります。

一応、タイトルはGlaciologistsから見たティルというふうにしています。ここでいうGlaciologistsというのは、澤柿さんの解釈している「氷河学」を勉強する人たちよりは少し狭くて、Journal of GlaciologyでいうGlaciology(雪氷学)を勉強する人たちのことです。

Glaciologistsから見たティルの捉え方は、J.Glaciology vol.46, 153 (2000) 213-221のTruffer and othersの論文に端的に現れています。曰く;

"In this paper we will call all unlithified material "till", irrespective of its origin."

要は、氷河の底面にあって氷河の流動に寄与しそうな未固結堆積物をティルと呼ぶというわけです。まぁ、なんとシンプルでしょうか!しかし、Glaciologistsにとってはこれで充分なんでしょうね。そして、このティルについて彼らが知りたいのは、

1.空間分布
2.層厚分布
3.物理特性(密度、含水量、液性限界...)

1と2はさておき、3は掘削孔や氷河底での観察結果からずいぶんデータが蓄積されていると思います。おそらく比較氷河では杉山さんあたりがこの辺をレビューしたと思うのですが、会議に出ていないので是非WEB上でも紹介してもらえるとありがたいです。

また、空間分布と層厚分布はもっと難しい課題だと思いますが、レーダの反射波やストレイングリッド+掘削孔の変形の鉛直分布などから、ある程度ティルの分布がわからないものかとも想像します。

今度でかけてきた山岳氷河の会議では、ノルウェーのEngabreenに底にあるSvartisen Subglacial ObservatoryというのがGunnar Oestremさんから紹介されました。氷河底の基盤に発電用の水路を掘って、ちょうど氷河の真下で氷河に達する縦穴をあけるような地下施設です。ここでいろいろな氷河底での観測が計画されているようです。以前もアルジャンティエール氷河底などに同様の施設がありましたが、規模がケタ違いに大きく、研究者が寝泊まりする施設もあります。JGの2000, 46 (155)599-610に、この施設からの成果が一部紹介されています。こういうところで比較氷河をやって、現物みながら議論したいですね。

以上、まとまりのない発言となりましたが、ティル研究の方向として

1)ティルの分類・記載→氷河環境の解明
2)氷河底ティルの物性→氷河流動の解明

の二つをやってはじめて雪氷屋さんと地形屋さんが同じ氷河という土俵で議論しあえるのかな?なんて思っています。という点では、地形屋さんは既に土俵にあがって、雪氷屋の登場を待っているのかな?日本の状況は。


澤柿 さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 01日 木曜日 17:59:19)

3.物理特性(密度、含水量、液性限界...)
2)氷河底ティルの物性→氷河流動の解明

これ,いま書きかけの原稿のアイデアに頂きます.お許しを.


白岩@ETH さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 01日 木曜日 18:09:51)

上はTruffer and others (2000)JG, 46(153)からの引用です。興味があったら見てください。Black Rapid氷河のそれぞれの物性値が載っています。

ちなみにTrufferはETHの卒業生で、この間こちらでもゼミをやりました。ドイツ語だったから良く判りませんでしたが、Black Rapid氷河というばかでっかい氷河で掘削して底面のティルの物性や流動特性を調べる仕事にただただ感動してしまいました。


白岩(自己フォロー) さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 05日 月曜日 17:24:57)

ティルの物性についてエラそうなことを書いてしまいましたが、昨日、つらつらとDeformation of Glacial Materialsを読んでいたところ、R.B.Alley, Continuity comes first: recent progress in understanding subglacial deformation 171-179に、ティルは充分柔らかいので、氷河流動に対しては、ティルの物性値に基づく流動則よりも、流動してティルが流失してしまう分を補う新たなティル生産(つまり氷でいう連続の条件)が大切であることが書かれていました。つまりTillのfluxを考えなければいけないということで、益々、氷河の底面でどのようにティルが生産され、消費されていくか?に関する知識が必要な状況になっているそうです。

やっぱり付け焼き刃の勉強ではどんどんボロがでるので、どなたかフォローよろしくお願いします。


杉山 慎 (北大低温研) さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 05日 月曜日 19:35:47)

先日の比較氷河研究会ではお世話になりました。
発表の機会まで頂いて、非常に有意義な2日間でした。
遅くなりましたが発表内容を掲示してもらいましたので、
目を通して頂けると幸いです。

氷河底堆積物の分類に関しては、
今そこに無い氷河を議論する事の難しさを垣間見たように思います。
今そこにある堆積物と氷河を繋ぐ唯一のものが生成過程である以上、
生成過程を最重要視せねばならない、という事でしょうか。
分類した以上は見分けられねばならない、とも思うのですが、
これも大変な困難が伴う仕事でしょうね。

私自身には、白岩さんが紹介したTruffer等の単純な定義が便利です。
実際の氷河では岩屑を含む底面氷と堆積物との境界さえも明瞭とは限らないので、
なるべく自由度のある術語をその都度丁寧に修飾した方が楽だと感じます。
Black Rapids氷河に関する報告は、
Truffer以外の論文にも"till"に関する断り書きがあります。
例えばM.NolanとK.EchelmeyerのJournal of Glaciology (1999) 45, 119では、

"We use the term "till" herein, following Paterson (1994), to refer to any unlithified basal debris, whether glacially derived or overridden material, such as incompetent fault gouge beneath glaciers situated along major faults or marine sediments beneath tidewater glaciers."

となっています。
アラスカ大学のグループ内で議論があったのでしょうか。

私自身は氷河の流動という観点から氷河の底面付近に興味が持っています。
氷河が氷や堆積物の静的な変形によって流動している以上、
(1)氷河を構成する物質がどんな応力のもとにつり合っているか
(2)その応力の下でそれぞれの物質がどんな変形を受けるか
この2点が流動を考える上で最も重要だと考えています。
高い水圧下にある堆積物、岩屑や不純物を含む氷などの力学特性は、
まだまだ良く理解されていないので、
実際の氷河底がどうなっているかを調べると共に、
構成要素それぞれの物性を知る事が必要ではないでしょうか。

Alleyの着目する堆積物の収支も大切だと思いますが、
「充分柔らかい堆積物もあれば、そうでない堆積物もある。
 充分柔らかい堆積物が充分速い速度で流動していれば、
 堆積物の収支が重要になる。」
くらいの解釈が適当ではないかと思います。

それぞれの氷河で得られた結果を、
少しでも一般的な議論に結び付けようとする姿勢は重要ですが、
堆積物に関してはまだまだわからない事が一杯です。
まずは時間と場所を限定して、
今その場所に何があってどう振る舞っているか、を理解する事が、
時間軸と空間軸を伸ばすための出発点になると考えています。


白岩 さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 05日 月曜日 23:03:28)

杉山さんの
「充分柔らかい堆積物もあれば、そうでない堆積物もある。
 充分柔らかい堆積物が充分速い速度で流動していれば、
 堆積物の収支が重要になる。」

は大変説得力がありますね。氷成堆積物の分布を見ても、どこか1点の情報で全体を一般化しようというのはムチャクチャであることは良く理解できます(でも地理学で産湯につかり、地球物理屋の間で10年仕事をした私としては、一般化コンプレックスというやつもあって、どちらかと言えば、多様性を認めつつも、一般化に憧れる面が多々あります。要反省)。

氷河屋のティルの見方については、来週からこちらの学生の公開博士審査の副査として、上にでているK.Echelmeyerさんが来るので、チャンスがあったら尋ねてみます。


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