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ティルの成因分類についての討論会をしませんか? ## 会議室:「Glacier BBS」

ティルの成因分類についての討論会をしませんか? ##

ティルの成因分類についての討論会をしませんか? #からの続き


澤柿 さんからのコメント
(Date: 2001年 3月 03日 土曜日 12:08:38)

長谷川さん--そこでの複雑な作用の結果として最終的に生成された堆積物を,とり
      あえずロッジメントティルと呼んでおく.

この部分は,単に「氷河底ティル」のほうがよいのではないかと思います.

<以下蛇足です>
氷河地質学の最終目標は「氷成堆積物を何と呼ぶか」ということろにはありません.
研究者の間で自然の何を議論しているかが分かればそれでいいのだと思います.

何とよぶか,どの言葉に相当する現象か,なんて考えるのは私の優先事項の中では
低い位置にあります.またそれ自体を出発点にはしていません.

言葉には本質はありません.本質は自然にあります.
自然を前(頭の中)に置いて議論しましょう.


澤柿 さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 03日 土曜日 20:25:33)

溶岩とその後の岩石の形成の例示に関してフォローしてください,とのことでしたの
で,一言.

長谷川さんの例示を氷河に適用することは特に間違っていないと思います.しかし,
タームに関して言えば,溶岩の流動・冷却メカニズムやプロセスを反映するように最
終生成物である火山岩の記載名が決められているわけではありませんよね.火山岩・
堆積岩のような属性を決める言葉はありますが,これは氷成堆積物と同じ階層にある
ので,今回の議論には当てはまりません.

これに対して氷河堆積物の記載名にはプロセスを指す言葉が入っており,これが混乱
を招く原因になっています.なぜそういうことになったか,という理由を個人的に考
えてみました.

1)氷河学者が地質学の命名法に関して無知だった?
2)堆積学プロパーの学者が氷河堆積物に関してまじめに興味を持ってこなかった?

ここまでは,地質学側の事情も補足しておく必要が有ります.地質学の岩石の記載名
は物質科学的側面が強く,別々の場所で採取された岩石どうしが同じ物かどうかを決
めることが大きな目的であった経緯があります.ですから,プロセスはおいといて,
物を同定できることを命名の主目的にしたのだと考えます.火山活動・変成プロセス
・地殻変動のメカニズムが詳細に解明されるようになっても,昔のやりかたによる記
載名が生き続けていられてきたのは,そういう意味では単なる偶然でした.かつて大
昔(といっても,氷河時代の存在が認識され始めた時期とそうかわらない時代)に,
花崗岩の成因に関して大論争がありました.火成岩か水成岩かの議論です.最終的に
は火成岩に決着したわけですけど,花崗岩という記載名はそのまま残っています.

3)氷河学者は自己主張が強く,タームに関してコンセンサスをつくっていくことに
  まじめではなかった?
4)白岩さんが別のスレッドで書いておられるように,いわゆる雪氷屋の立場で堆積
  物を記載してきた?
5)氷成堆積物の研究は,氷河の消長や流動特性の解明と結びつくことが多いので,
  単なる層相の記述では目的を達成できす,あえてプロセスを指す言葉を使ってきた?

5)の「あえて」というニュアンスには,プロセスの解明が進むに従って内容のほう
が変化することを容認する,ということを含んでいます.いくつか考えられる原因を
列挙しましたが,私は4)か5)が一番妥当なのではないかと思っています.その理
由を以下に書きます.

これは氷河学が「氷河時代」の認定に源を発していることとも関係します.ライエル
流の「斉一説」には,有名な「現在は過去の鍵である」という観念と同時に,「地球
は現在とあまり変わらない姿でずっと存在してきた」という観念が含まれたいました
.前者は現在でも生きていますが,後者を今では信じる人はまずいないと思います.
後者の斉一観の変革を促した契機の一つが「氷河時代」の認定だったわけです.つま
り,氷河学は発祥の経緯として,そもそも変化というものに非常に敏感だったわけで
す.ですから,ものの記載だけにはあきたらず,ついついプロセスを含んだ言葉を使
ってきたのだと思います.聖書の中の「洪水説」に対する科学的独立心もあったに違
い有りません.

理想的には,議論を厳密にするため,および,地質学や堆積学とも調和していくため
には,氷河地質学においても,成因からは独立して同定可能な記載名を用いるべきで
しょう.

こういう提案が今の氷河学で受け入れられるかどうかは疑問です.記載名を用いて別
々の場所の堆積物を同定することは,氷河学においてはあまりメリットがありません
から.ですから,今後もプロセス名が尊重される傾向は変わらないのではないかと思
います(といって,これが本当にいいかどうかは別です).「プロセス名じゃなくて
,同定可能な記載名を使おう」と主張して,「お前の氷河地質学は20年遅れている
」と言われるのが怖いんです.実は(笑).


白岩 さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 04日 日曜日 6:52:24)

通勤時間を利用して、ここ1週間ティルの議論勉強しました。最後の長谷川さんのまとめもあってほぼ議論の内容が理解できました。勉強させていただいたお礼に一言コメントさせてください。

1点だけ長谷川さんのご意見に反対があります。

長谷川さん
1)初生構造の形成が終了した堆積物をティル,それ以前の岩屑を氷河上岩屑・氷河下岩屑と呼ぶ.氷河内の岩屑は氷河底(部)岩屑・氷河内(部)岩屑と呼ぶ.これは80年代とほぼ同様.

私はやはり氷河底にあって流動に寄与している未固結堆積物もティルと呼ぶべきであると思います。確たる理由は見あたらないのですが、こちらの研究者もSubglacial deforming bedなどという長い名前は使わず、ティルと呼んでいます。これは昔から変わっていないと思います。Subglacial deforming bedという言葉は、南極のアイスストリーム研究が始まった頃、アイスストリームの下にあるティルだかなんだかわからないが、氷とは違う層が変形しているらしいことから、とりあえずSubglacial deforming bedと呼んでおけば無難であろうという判断から使われた言葉だと思います。これらの変形層の大部分が未固結堆積物であるとわかった以上、あえてSubglacial deforming bedという用語を使う必要性は薄いと考えます。

もう1点、もし屁理屈をつけるとすれば、長谷川さんのように氷河底にあった時と、解氷された後の堆積物をSubglacial deforming bedとティルというふうに分けるとすると、解氷後、我々が露頭で観察するまでに働いた圧密・化学的変質・力学的変形などの続成変成作用を受けた堆積物は、解氷直後のティルとは別の用語が必要になることにならないでしょうか(たとえばPostglacial physically and chemically metamorphosed tillなんて具合に)。

現段階では長谷川さんも澤柿さんも考えておられるように、最低限、日本の露頭で交わせる共通用語を確認しておき(今回の皆さんの議論である程度これは果たされたと思います)、氷河底での物理・化学作用の研究が進んでいくにつれその成果を受入る余地がある程度に緩いターミノロジーがあれば良いのではないかと思います。

そのためには、澤柿さんの言うように、日本の氷河地質屋さんも氷河底のプロセス研究にどんどん乗り出すべきだと思います。日本は世界にフィールドをもっていますし、掘削技術・電子計測技術は高いレベルにあると思います。松岡憲知先生を中心とする周氷河グループが、この10年間でこれらの技術を駆使し、また欧米のグループと積極的に交流して大きな成果を日本でもスイスでも上げているように、氷河地質グループも日本の地形研究と並行して(あるいは一旦こちらは置いておいても)現成の氷河底プロセスの研究を進めることは意味あることだと思います。

岩田さんは突然、我々3人に引導を渡されてしまいましたが、ここらでもう少し、岩田さん、平川さんに踏ん張ってもらい、上の研究ができるような財政的基盤を進めていただけたらと思います。

以上、蛇足にしか過ぎませんが、勉強させていただいたお礼まで。


平川一臣 さんからのコメント
( Date: 2001年 3月 05日 月曜日 15:25:33)

さきほど(3月5日),氷河地形・地質にかかわるさる用件があって,沢柿さんと話をしていたら,この一連の討論があることを知らされ,いやはや,すごいことになっていた,巻き込まれなくてよかった!!(?),ワープロとメール以外にほとんどパソコンを使わないのも悪くない,と再確認した次第.しかし,計らずして,高見の見物を決め込めたのは,趣味は悪いのですが,なかなかのものです.
小生は80年代以前は,ほとんど氷河地質のおさらいをやっていませんでした.このところ必要に迫られて少しは勉強していましたので,議論にはなんとかついていっているとは思っていますが....フィールド派の小生としては,現場の露頭を前にして,最も基本的な概念に関する認識が違っていることさえお互いにわかっていないようでは,議論しても徒労に終わるでしょうから,さぞかしお疲れの方もおいででしょうが,今回の議論は意義が深かった(大きかったのではない)と思います.長谷川さんもまだ40ですし,先に引導を渡されたロートルは,”去りゆくのみ”ですが,.....,でも本当はこのあと怖い言葉が続いているのをご存じでしょう:”I shall return”  もちろんこの shall の意味わかっていますよね!! 


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