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エベレスト,地球温暖化で高度低下か <@BANNER>

会議室:「Glacier BBS」

エベレスト,地球温暖化で高度低下か

発言者:朝日@北大
(Date: 2004年 8月 18日 水曜日 8:38:55 AM)


8/16の北海道新聞に表題の記事がありました.誰か紹介するかなと思いましたが,ないので書き込み.
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地球温暖化で高度低下か エベレスト、30年で1メートル強  
2004/08/16 03:57

 【北京15日共同】15日の新華社電によると、中国科学院青蔵高原研究所
はこのほど、世界最高峰エベレスト(中国名チョモランマ)の高度が地球温暖
化により、1966年から99年にかけ1・3メートル低下しているとの分析
結果を発表した。

 科学院の計測によると、雪面を含めたエベレスト山頂の高度は66年に88
49・75メートルだったが、その後一貫して低下。99年には8848・4
5メートルとなった。年間平均の低下幅は92−98年が約0・1メートルと
それ以前の10倍に達し、その後も拡大しているという。 
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新聞本紙の記事では,
エベレストは現在も僅かながら上昇し続けているが,山頂の積雪は十数メートル
から数十メートルと見積もられており,これが地球温暖化で融けている
というようなことが書いてあった.

リクエストがあれば古新聞を引っ張り出して,記事全文書き込みます.

青蔵高原研究所(在北京)には氷河屋も地質屋もいたと思うのだが・・・
むー

道新の記事


朝日 さんからのコメント
(2004年 8月 18日 水曜日 8:56:36 AM)

共同通信配信記事だからどこか他の新聞社でも記事になっているだろうと思って
検索してみたらうじゃうじゃ出て来ました.いちいち紹介するほどでもなかったか.

(解説部分のみ)
[産経]
エベレスト自体は地殻変動でわずかながら上昇が続いているが、山頂は厚さ10
数メートルから数十メートルとみられる雪と氷に覆われており、同科学院は温暖
化の影響で雪が押しつぶされて氷に変わるスピードが速まっていると分析している。

 エベレストは、中国政府が75年、公式測量で雪面を含む山頂の高度を884
9・05メートル、積雪の厚さを92センチとして頂上の標高を8848・13
メートルと認定。99年には米地理学協会が衛星利用測位システム(GPS)に
よる精密観測で8850メートルと発表した。(共同)

(08/15 22:45)
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[読賣]
エベレストの山頂部分は厚さ十数メートルから数十メートルの雪と氷の層が存在
する。研究者は、「気温の上昇は、雪が氷に変化するプロセスを加速する。標高
の低下は、雪が氷に引き締まる過程で起きた」と指摘。実際に標高の急低下が始
まった92年は、「気候が急激に温暖化した時期と付合する」としている。
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澤柿 さんからのコメント
(2004年 8月 18日 水曜日 10:21:05 AM)

よく「エベレスト山頂の石をとってくる」なんていうのを聞くので,ピークは基盤だとずっと
思っていました.実際は雪氷だったんですねえ.じゃ「山頂の石」ってのはありえないことに
なりますな.どこで勘違いしていたんだろう?

それから「雪が氷に引き締まる過程」ってのがよく分からないのですが,山頂部で融解が
起こるほど気温が上昇している,ということですか,それとも,山頂部の降雪が,乾雪から
湿雪に変わったってことですかねえ?

山頂部の年平均気温はどのくらいなんでしょうか?

流動しているとすれば,涵養量の低下=降雪量の減少 という図式も成り立つような気がしますけど...

だれか解説をお願いします.


朝日 さんからのコメント
(2004年 8月 18日 水曜日 9:50:27 PM)

エベレストの高さについては,
鈴木弘道著「山の高さ(古今書院)」に大変詳しい解説があります.
これによるとかつて中国が1975年にエベレスト山頂に測量標を設置した
ときゾンデ棒で積雪深を測ったら92 cm,積雪分を引くと山頂高度は
8848.13 mだったそうです.

三角点の棒の長さは3.5 mだったので積雪面から2.6 m程棒が突きだして
いたことになります.その後加藤保男をはじめいろいろな人の登頂写真
の端にこの棒がよく写っていたのですが,その長さがその時々でまちま
ちだった,というのはよく出てくる話です.山頂は人が数人いられるく
らいの広さがあるそうですから,通常雪で覆われているらしいですが,
あまり雪がなかったこともあるらしく,積雪深は時々でそれなりに変わ
るようです.

ちなみに山頂の北西稜側直下には「世界一高い露頭」があるそうで,
山頂が雪で覆われていてもこのあたりで「山頂の石」を拾ってこられる
らしい.

ということで記事にある山頂の積雪が「十数から数十メートル」という
のはちょっと考えられない.

何かおかしな記事で,中国科学院がこの記事通り研究成果として公表し
たのか!? 共同通信の署名原稿なのでこの人の訳ミスか新華社電の時点
で「おもしろい」記事になってしまったのか.
中国科学院のプレスリリースを読んでみたいものです.
ここはやはり8000 mを越えたことのある「氷河屋さん」か「氷河地形屋
さん」にも解説してもらいたい・・・




澤柿 さんからのコメント
(2004年 8月 19日 木曜日 11:38:43 AM)

エベレスト山頂の測量標のこと,面白く読みました.

標高は平均海面(あるいはジオイド)からの高さなので,温暖化で海面が上昇したら,
標高もその分低くなる,ということもあり得るのではないか,とも思いましたけど...

「山の高さ」を読むと,チョモランマの標高を出すことにかけては,中国測量界の威信
をかけて力をいれてきた様子が伺えるのに対して,今回の地球温暖化と結びつけている
中国科学院の発表(というか報道のほう)は,雪氷学的にも???な点が多くて,マユ
ツバもののような感じがして,なんだか対照的ですな.

問題点を整理すると,
・エベレストの標高には,岩盤高と雪面高とがある.
・今回の発表は雪面高の変化についてのものである.
・雪面高の変化は,岩盤高に載っている雪氷の厚さの変化で決まる.
・雪氷の厚さは,降雪量・風食量・氷化量・融解量・流動量(氷河の場合)などによって変化
 する.
・今回の発表では,実際に雪氷の厚さの変化があったのかどうか不明.
・雪氷の厚さに変化があったとしても,温暖化が,雪氷の厚さを決めるどの要因にきいている
 のか,はっきりしない.

結局,基盤高の変化は今回の発表とは無関係であり,エベレストの山体自体が温暖化で縮んだと
いう誤解を与えかねないような報道内容となっているのは,問題が多いように思います.

逆に,雪氷を冠する山頂の高度(雪面高)が変化するのはしごく当然のことのように思えてきま
す.また,エベレストのような低温・強風環境下にある高山の山頂部に氷化した雪氷が存在する
こと自体,不思議なことです.どういうプロセスによるものなのか,詳しく知りたくなりました.


金森@北大 さんからのコメント
(2004年 8月 20日 金曜日 4:51:18 PM)

すみません、改行が入らず読みにくい投稿となってしまったので
再投稿します。前投稿を削除していただけますか?

[管理者] 削除しました.

以下前投稿に同じ
---
エベレストの山頂の氷厚が1m程度ではちょっと考えられないのです
が、産経新聞にあるように、山頂の氷が「10数メートルから数十
メートル」あれば、山頂の高度低下は雪の圧密で十分説明がつくように
思います。

エベレストの場合、気温は年間を通じて氷点下でしょうから、
雪の圧密氷化過程は主に温度と涵養量によって決まります。
温度が高くなると圧密速度も大きくなります。
ちなみに涵養量が大きくなると、次から次へと上に雪がのってくるので
圧密速度も大きくなるのですが、低密度の雪が上に供給されるため、
氷化深度が深くなります。

エベレストの山頂の氷の厚さは「10数メートルから数十メートル」
だそうですから、ほとんど全層がフィルンではないかと推測します。
したがってほぼ全層が圧密の途上にあり、温度が変化すれば、
→圧密速度が大きくなる
→全層平均密度が高くなる
→(全体の質量が同じであれば)層厚が薄くなる
と考えられます。

具体的な温度、涵養量の情報がないので何とも言えませんが、
Herron&Langway(1980)の涵養速度と温度から決まる経験圧密モデルの
センスからいくと、例えば年平均気温が-25℃から-20℃まであがれば
十分氷厚の変化として出てきそうです。
また、圧密反応速度は特に0℃に近くなると指数関数的に大きくなるので、
特に最高気温の温度帯が高くなれば全層の圧密速度に効いてきます。

>エベレストのような低温・強風環境下にある高山の山頂部に氷化した
雪氷が存在すること自体,不思議なことです.

これについて、どの程度の低温かにもよるのですが、
例えば2002年に掘削したカナダ、ローガン山のキングコル(標高4035m)
では深さ約50mで雪は圧密により密度830kgm-3を越え氷となります。
キングコルは10m雪温≒年平均気温約-18℃で、年間を通じてほとんど
融解がおこらない寒冷なサイトですが、深さ50mでは積もった雪が
上載積雪によって押しつぶされてできた氷が存在するわけです。
エベレストのような条件となると、まず表面の雪が強風でかなり小さな
粒子になりそうなので、表面雪の密度が異常に高くなるのではないかと
思います。また、年涵養量は極端に少なく(強風による削剥のため)、
氷化深度が相当浅くなるのではないかと推測されます。
仮に初期密度450kgm-3、涵養速度100kgm2a-1、温度-25℃として
上記Herron&Langway(1980)のモデルで試算すると氷化深度は30m前後です。


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